天宮光啓

 

十善戒とは、十種類の善行を総称した戒めです。十善業(じゆうぜんごう)、十善道(じゆうぜんどう)ともいいます。十悪の否定形であらわされます。

 

特に、仏教では人間の行為のすべてを身(行為)、口(言葉)、意(心)の3種に分けて、私たちの「身・口・意」(三密)でもろもろの悪(十悪)をなさないことの大切さが説かれています。

 

■ 身体において

不殺生(ふせっしょう) むやみに命あるものを傷つけず殺さず
不偸盗(ふちゅうとう) 盗むことなかれ、与えられていないものを自分のものにせず
不邪淫(じやいん) 淫らな男女の交わりをおこなわない

 

■ 言葉において

不妄語(ふもうご) うそをつかない、根拠もなく無責任なことをいわない
不綺語(ふきご) 飾り立てた不誠実な言葉を発しない
不悪口(ふあっく) 乱暴な言葉を使わない
不両舌(ふりょうぜつ) 他人同士を仲違いさせるようなことをいわない

 

■ 意において

不慳貪(ふけんどん) 欲深いことなかれ、むさぼることなかれ
不瞋恚(ふしんい) 耐え忍んで怒らない、憎しみや妬み嫉妬心から怒ることなかれ
不邪見(ぶじやけん) 誤った見方や、間違った考え方をすることなかれ

 

このように、人間の行為のすべてを身行為)、口(言葉)、意(こころ)の3種に分けて、身体(3つ)、口・言葉(4つ)、意(3つ)、それぞれで十悪をなさないことをいいます。

 

十善戒を毎日守りながらお唱えすることで、少しずつ功徳を積むことができます。この命が、この身体(肉体)があるうちに、コツコツと善行を積んでおきたいものです。死を迎えた瞬間、恐怖と絶望に苦しみながら、けっして後悔の念にさいなまれないためにも。

 

今、この瞬間をしっかりと力強く堂々と生きることこそ、まさに過去世・現世・来世の三世を大切にすることに等しいのかもしれません。

 

合掌

 

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